産業財産権(工業所有権)の例
知的財産権のうち、日本では特許庁に手続きすることで、一定の基準を満たした際に権利が与えられる産業財産権「特許」「実用新案」「意匠」「商標」を狭義の知的財産権ということもあります。狭義の産業財産権は、工業所有権ともいわれることがありますが、2003年に施行された知的財産基本法以降は、工業的な商品に限らず各種のサービスなどにも広く適用されている現状から「産業財産権」と呼ばれることが多くなりました。
図には狭義の産業財産権の種類を、携帯電話を例に説明しています。特許権は、発明を扱うもので、自然法則を利用した技術的な思想のうち、高度のものが特許の対象になります。例えば、ディジタルの信号の有(1)、無(0)で組み立てた信号情報を使い送受信することで通話を行う方法や、回路、軽量で丈夫な電話機などの筐体に使う素材や加工法、稼働時間を長くできる長寿命の電池などの高度な発明が、特許になる発明です。のちほど述べる条件を特許庁で審査して認められたものだけに一定期間の独占権が付与されます。これらの権利期間は出願日(特許庁に対して出願書類を提出した日)から20年になります。ただし薬などの厚生労働省の許認可が必要な分野では、最大5年の権利期間の延長が認められることもあります。
実用新案は、物の形状や構造についての技術的なアイデアである考案が保護対象で、技術思想ですが、高度であることが求められない点で特許とは異なります。公序良俗に反する世の中に悪影響を与える考案を除いて、無審査で登録される制度になっています。ただし実用新案権を行使するためには特許庁に実用新案技術評価書を請求することが求められます。つまり登録になっても権利としての評価が得られないと権利行使ができない仕組みです。
意匠は筐体などの外見のデザインで、顧客が製品を購入するときの選択肢として視覚にうったえる美的な要素です。特許庁の審査を経て登録になりますが、権利期間は登録から20年になります。(出願から25年に変更予定)
次に商標ですが、製造または販売する企業の顧客に対する信用力を高める要素で、ブランドとも言われますが、商品やサービスの品質保証の面もある重要な要素になります。商品につける名称やロゴなどのマークが登録の対象です。特許庁での一定の審査を経て登録されます。権利期間は登録から10年ですが、使用している実績があれば、権利の更新ができます。したがって、ビジネスが続く限り権利を維持できる息の長い権利となります。特許、実用新案、意匠権は権利満了で誰でも自由に使える有限の権利ですが、商標は更新することで無期限に独占権を維持できることが特長です。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
|知財情報 TOP|