特許の審査
独占権を求める出願人は特許庁に対して出願審査請求をします。特許庁では、審査請求のあった発明を原則として審査請求順に審査します。
図では審査の要素を表現しました。
お城の天守閣の上に特許と書かれていますが、特許になるためには石垣となっているいくつかの条件をすべてクリアしなければなりません。つまり、これらの要件(石垣)の上に特許権(天守閣)が成立していることになります。
まずは、「発明」であるかどうかが問われます。物理化学の法則に則っているか、再現性があるかが判断されます。
国宝の窯変天目茶碗があります。これらは、現実に作られて存在しています。多くの人がチャレンジしましたが、これらの美しい茶碗を再現することができませんでした。つまり、どのような材料(土や釉など)を用いて、どのような条件で焼成することで、作ることができたのかが、明確ではないのです。発明であるためにはこの作成のためのレシピの開示が必要になります。
実は、窯変天目を茶碗で実現したり、タイルなどに焼く発明が既にいくつかなされ、特許にもなっています。これらはいずれも材料や、焼成の条件などのレシピが開示されています。実際に、瀬戸毅己(紫陽花窒)さんが、見た目では国宝と変わらない美しい窯変天目茶碗を再現し、実際に複数の作品を世に出しています。しかし、複数の作品が実際に存在し偶然ではなく再現性はあり、ノウハウとしては確立しているようですが、レシピの公開をしない、弟子も取らない方針で、特許出願をしていません。こうしたケースは実現性や再現性があっても発明としては成立しないことになります。
次に判断されるのが、「最先」であることです。発明を世の中で最初になした者に独占権を認めるということです。この最先となるのは、特許庁に初めに手続きをした案件です。一日でも早く手続きをした人または企業に独占権が与えられます。同じ日に同じ発明が手続きされた際は、両者で協議し、一人に絞ることが必要です。実務的には同一の発明にならないように両者の権利範囲を変えることで両者が権利を成立させているケースが少なくありません。 「産業利用」は、発明の産業上の利用性を判断します。これは産業界で利用できる可能性があるかどうかを判断します。企業活動の中から出てきた発明には、あまり問題になるケースはありません。例えばレスリングや体操などの技や型を新しく創作した場合などでは、産業上の利用の可能性がないとして断られること(拒絶)になります。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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