特許の手続き
特許出願から登録されるまでの、特許庁における手続きのフローを図に沿って説明します。
特許を取得するためには、発明の内容を説明した書類「特許願」などを特許庁に提出します。これを出願と言います。特許庁では出願書類を受理した時点で、特許出願番号を通知してきます。
出願から18か月過ぎたところで、必要な書類は整っているか、公序良俗などに違反しないかなどの形式的な審査(方式審査)を経て、すべての発明を官報として公開します。「特許公開公報」です。この公開公報には特許公開番号が付与されます。
特許権を得るためには、特許庁において技術内容の審査(実体審査)を受ける必要があります。審査をしてもらうためには「審査請求」をしなくてはなりません。審査請求は、出願から3年以内と決められており、出願人は出願から3年経過する前に権利化すべきかどうかを判断しなければなりません。出願と同時に審査請求をすることもできますし、出願人以外の第三者が審査請求をすることもできます。審査請求期間は2001年9月30日までは出願から7年でしたが、権利化されるかどうかの不安定な期間が長いことは社会への影響も大きいため、3年に短縮されました。
審査請求がなされた出願は、原則として審査請求順に「審査」がされます。この審査では、特許になる要件を満足しているかどうかの技術内容を含めた審査が行われます。
審査した結果、特許になる要件を満足しない場合には、特許庁の審査官は「拒絶理由通知書」を発行して、出願人に通知します。拒絶理由通知書には拒絶する理由を、証拠と同時に示します。
この拒絶理由通知を受けた出願人は、拒絶理由に承服できないときには、その理由や主張を述べることができます。これを「意見書」と言いますが、審査官の挙げた拒絶の理由に対し、個々に反論を述べることになります。
特許庁の審査官は、出願当初の明細書または審査請求時点で補正がされていればその補正内容に基づいて審査をします。例えば、現在の請求項に記載された内容では、先行している発明と区別がつかない場合にも拒絶してきます。つまり、請求項記載の表現が曖昧なことが少なくないのです。この場合には、請求項の表現を補正して、拒絶理由が解消することもあります。明細書の記載を「補正書」として補正修正することが求められます。実際には明細書の内容を補正するとともに、その補正内容を基に拒絶理由が解消した旨の意見書を提出することが多く行われます。
なお、補正は出願当初の明細書に記載していた範囲内でしか行えませんので注意が必要です。
補正書や意見書が出されると、審査官は提出した内容を精査して改めて審査をします。その結果拒絶する理由が解消されたら「特許査定」を出します。補正や意見を参酌してもなお拒絶理由が解消しない場合には「拒絶査定」を出します。
登録査定が出た案件は所定の登録料を納付することで特許が「登録」されます。登録になった案件には特許登録番号が付きます。特許権が成立した旨は「特許公報」(官報)として発行され公表されます。これは特許掲載公報とも呼ばれます。
「登録」になった発明は出願日から最大20年までの独占権が与えられます。(医薬品は5年の延長が認められることがありますので最大25年になります。)
登録になった内容について、新規性や進歩性など特許要件に違反しているなどの疑義がある場合には、誰でも6か月以内に「異議申立」をすることができます。また、利害関係のある当事者であれば、登録後の何時でも(権利満了後も)特許権の無効を主張する「無効審判」を提起することもできます。
改めて審査された結果「拒絶査定」になった場合には、さらに特許庁の中での上級審査ともいえる「審判」を請求する道が残されています。「審判」に上がった案件は、審査官経験者の審判官が3名(複雑なものは5名)の複数で合議し、審決を出します。特許庁の審判について不服がある場合には、知的財産高等裁判所に提訴することになります。その後は最高裁判所まで争うこともできます。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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