産業財産権制度の国際化
ビジネスの国際化は、今や企業規模や業種業態に係わらず避けて通れない状況であることは異見の無いところでしょう。しかもインターネット時代に象徴されるように、瞬時に情報が全世界に発信・伝達されてしまいます。正にボーダーレスの世界になっています。
このような中で、産業財産権制度は各国ごとに独立で、国ごとに権利が与えられます。そこで、各国の制度や運用の調和を図る動きが様々な場で検討されています。
ビジネスを進める上で、各国ごとに独占権の範囲が異なっていることは混乱を招くことになります。そこで国ごとに権利範囲がバラつかないようにしようとする動きがあります。審査のレベル統一や発展途上国における審査負荷の低減を図るなど、様々な対策が取られています。審査レベルの統一のためにアメリカなどとの二国間協定で審査資料の交換、基準の突合せなども実施されています。
ヨーロッパではヨーロッパ特許庁(EPO;European Patent Office )が1977年に設置され、ヨーロッパ各国で権利化を図りたい発明についてはEPOが統一の審査をして登録すべきかどうかの判断をし、登録後の権利は各国特許庁で取扱う制度ができました。一つの手続きで複数の国に出願できる「特許協力条約」(PCT;Patent Cooperation Treaty)が1978年に発効しました。また各国ごとの事務手続きを合わせようとする条約「特許法条約」(PLT;Patent Law Treaty)なども締結されています。国際的に統一した特許分類を使用する「国際特許分類」(IPC;International Patent Classification)、商標手続きの統一を図る「商標法条約」(TLT;Trademark Law Treaty)など個別の条約や、関税と貿易について総括的に話し合われる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS;Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)の場でも交渉され、世界全体での制度や手続きの調和を図る動きが続いています。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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