商標権
商標は、顧客が他のサービスや商品と識別できる標章です。ブランドとも言われますが、個別の商品やサービスにつけることで、誰が製造販売しているかの出所が明確になり、顧客が求める商品かどうかを判断することができます。
商標には顧客から見て、このブランドの商品なら間違いはないという品質を保証する役割もあります。これは顧客の信頼を得るために日常的に、しかも長期にわたる信頼の積み上げの結果得られた信用のマークともいえます。ブランドは長年の積み重ねの上に成り立つもので、顧客の信頼を裏切ることが無いようにリスクマネージメントも重要になります。
さらに、こうした顧客の信頼と識別力は、顧客への宣伝活動、営業活動の結果得られることにもなります。イメージ向上のブランド戦略などを重視している企業が多くなっています。
商標には称呼、文字のロゴ、図形、またはそれらの組み合せの例が大半です。図には商標登録された商標の例を紹介しました。
商標として登録されない例として、一般的に使われている商品やサービス役務の名称(たとえばパソコン)、慣用的に使われている名称(お菓子の羽二重餅)、加工法や品質そのものを表す表示(肉料理などでの炭火焼き)、ありふれた名前(佐藤商店)、きわめて簡単かつありふれた文字列(AB)、誰の役務や商品かが区別できないキャッチフレーズなども登録にはなりません。
チキンラーメン(商標登録第685160号)、自動車のSUZUKI(登録商標第2635408号)は例外的に顧客識別力があるとして登録されました。
また簡単な文字列ともいえる三文字で登録になった例としてABC(商標登録第435917号)があります。
登録になる商標の対象は国際的な条約への加入、経済情勢やビジネスの多様化などの時代の流れで変わってきました。
1991年にはそれまでは物品ごとの指定された商品に付与されるマークや呼称が登録の対象になっていましたが、役務と呼ばれる各種のサービスにまで対象が拡大されました。1996年には不二家のペコちゃんなどの人形のような立体物も商標の対象になりました。
また、2005年には地域の特産などを対象とした地域団体に登録が認められるようになり、例えば小田原の蒲鉾など各地の名産を団体商標として保護できるようになっています。
2014年には、図に示したような音響、色彩、パッケージのどの位置に商標を配置するかなどの位置、コマーシャルなどでの映像的な動き、ホログラムなど商標の保護対象が大幅に追加されました。
商標はサービスや商品ごとに登録の対象となった区分が決められていますが、商標権の効力は同じ指定商品の範囲での専用実施権が認められます。例えば図に示すように、指定商品として鉛筆にBuffalo という商標権が認められたとすると、権利者は鉛筆の範囲内で商標を専用権として認められます。指定した商品を超えて文房具全体に専用できる権利を主張することはできません。しかし類似の範囲として同じような文房具の消しゴムに他人が、カタカナのバッハローを使うことや、同じ鉛筆にばふぁろーという商標を付けることや、登録されることは禁止されます。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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