特許情報の性格
特許情報は、研究開発に関連する情報としては貴重なものです。図の特許情報の性格に示すように技術情報と権利情報の二つに分けて見ましょう。
技術情報の公開が早い
技術情報としての特徴を見てみると、技術の公開が早い点が挙げられます。出願から18か月で、公序良俗などの違反行為が無ければ全て公開になります。近年はインターネットが発達しており、世界中の情報が瞬時に伝わるため、ネットの情報発信力が評価されています。しかし、インターネットへの掲載時期などは、何らかの形で発信側の意図が反映されます。ところが特許情報は、出願から18か月経過すれば、発明者や出願人の意図は考慮されずに、全ての情報が公開になります。
特許出願は特許庁への手続きが一日でも早い、先に出願された発明に権利が与えられますので、開発の成果はいち早く出願されるのです。したがって、学会などでの発表、新製品のリリース情報より早いことが多くなります。ネットや学会発表に先行して公報が発行されることが多くなっています。
技術内容の説明が詳細
技術情報の内容を見ると、発明がどのような課題を捉え、どのようなやり方、つまり解決手段でその課題を解決したかが図面を示しながら書かれています。そしてどういう効果があるかが明確に記載されています。これは、一般的に発表時間の制限や、論文掲載文字数などの規定がある学会誌などと異なり、発明が適用される技術分野において通常の知識を持った当業者が、発明を理解し再現出来るまで記述することが要求されます。独占権を与える以上は、技術内容を当業者が確実に理解できるまでの詳しい内容を示す(発明の開示)ことが条件になっているからです。文字や図面などの制限はありません。必要によっては数百、数万ページに及んでも全く構いません。遺伝子の配列やコンピュータソフトウエアなどの発明では長大な文書量になっているケースが現実にあります。
また、先に述べたように一時でも早く出願をした人に権利が認められるため、実用化までにはコストが掛かり、現実的ではなくても、理論的に実現性のあるアイデアであれば特許権が認められます。したがって、新たに着想し、実現性が明確であれば革新的な技術や新しい発想の技術など、必ずしも実用化され、製品として適用されている技術に限らず、様々な技術が公報に記載されていることが少なくありません。
技術開発の歴史がわかる
こうした特長から、発明された年代順に発明を並べることで、技術の発展の歴史、技術動向などの技術の流れを把握することも可能となります。課題なども新しいモノが明確になりますので、技術予測に活用できるとする見解もあります。一般的には、技術情報は内容的な評価がなされていないこともありますが、特許公報では、特許庁による新規性や進歩性の評価がなされておりますので、技術評価の済んだ情報であるともいえます。
これらの特許情報は、世界各国で形式の統一がなされているため、取り扱いの容易な情報といえます。これらの技術情報としては公開公報が、公開が早いため注目されていますが、1年間に数千件は審査請求がされてから、審査が行われ、登録になるまでに18か月掛からないケースもあり、特許公報が公開公報よりも先に発行されることもあります。技術情報としての調査の範囲は公開公報と、特許公報の両方を対象にすることが肝要です。
権利情報としての性格を見ると、権利範囲が文章で表現されており、ある程度具体的になっています。また、権利者、発明者は誰かなども示されており、権利書として明確であることが挙げられます。特許権は排他的な独占権であり、知らなかったということが許されませんので、特許情報をいつも研究・開発業務の中でしっかりと把握しておく事が求められます。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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