検索キー選定
特許データベースをツールとして検索を行うにあたり、検索のキーを選択しなければなりません。
技術用語での検索について見てみましょう。検索キーの選定に示した図のように、検索調査のテーマについて、技術的な特徴を表す用語、着目している点を表現する用語を選択します。発明を構成する要素技術を個々に分解することは公知例調査の項で説明しました。
さらに、テーマに関連して既に知っている特許や学術文献などで使われている技術用語をピックアップします。そして、その技術用語の同義語や観点を変えた表現を探し出します。英文の場合には、イギリス英語表記とアメリカ英語表記では異なることがありますので、そうした点にも配慮して検索用語を選択します。
全文検索のデータベースでは、発明者なり出願人により用いる技術用語は異なることが出てきます。また技術用語検索では、同義語が思いつかないケースが出てきます。こうした時にお勧めの同義語の見つけ方を図示しました。技術用語で検索した出力を見て、テーマに近い発明に付与されているIPCを把握して、そのIPCで検索してみます。そして出力から該当の技術用語のバリエーションなり、同義語を探します。用語→IPC→用語→IPC→用語を繰り返すことで、当初意識していなかったり、思いつかなかった技術用語を見出すことができます。
同じ様に用語から出願人を見つけ、その出願人で検索することで、その出願人がよく使う技術用語を見つけることもできます。出願人が基本的なアイデアを出した会社や機関であれば、当初の技術用語表現を見出すこともできます。同様に発明当初に付与されていたIPCから新たな技術用語を見つけだすこともあります。発見された同義語は、概念の異なる発明を検索してきてしまうこともありますので、同義語と思われる用語がノイズを拾ってこないことを確認してOR検索をすることも必要です。
発明を構成する技術要素の組み合わせが、全ての技術要素を含むものではなく、複数の発明として別々に出願されていたり権利化されていることもありますので、同義語の組み合わせは必要最小限の組合せを考慮して探すことも大切です。
また、上位概念や下位概念での表現にも留意します。例えばゴムでも、バネでも、ウレタンでも良い場合に、上位概念の弾性体として表現されていることがあります。技術によっては空気ダンパーのような空気を弾性体として使用することさえあり得るのです。
技術用語の活用の図に示したように、技術用語の種類によっては、発明の中の技術分野、目的、効果、用途、具体的な実施形態などによって異なることがあります。特に実施形態や実施例では化学記号や物質名などが比較的具体的な表現がなされていることもあります。場合によっては商品名や部品の型式番号が記載されていることもあります。中にはある種の規格に則った技術を対象にした発明である場合にはISOなどの規格が記載されていることもあります。検索キーとしては念のために規格番号などで検索してみることをお勧めします。
特許の請求の範囲、請求項では一般的に上位概念で記述されていますが、下位の概念が実施形態に表現されていることも少なくありません。具体的な適用例から、上位概念での表現を見出すこともできます。
請求項は上位概念で記述することが多くありますが、案件によっては下位概念の表現で表していることもありますので、技術用語の検索で上位から下位の概念まで、なるべく広く網羅して検索しておく事が望まれます。
IPCなどの分類検索では、付与のバラつきがあることを考慮してキーの選定をすることが重要です。IPCは機能分類であるため、国ごとに観点が相違することはあります。また、アメリカ特許公報に記載されているIPCは、アメリカの分類とIPCの対照表を基に付与されていることが多く調査検索のキーとしてIPCを使うことは避けるべきです。最近はヨーロッパとアメリカの共通特許分類CPC(Cooperative Patent Classification)が付与されています。公報の発行時には付いていない場合でもデータベース上は過去に遡ってCPCが付与されています。CPCの付与は従来のIPCよりも正確性が高いとのことで、今後は有効な検索キー分類になることでしょう。
特許分類は、本来はその発明を特定する最適な分類を付与することになっていますが、明細書の中の記載に流され、発明を適用する技術、応用する分野の分類が付与されることもあり、どのような技術を対象に付与されたのかを考慮しないと、本来付与されるべき分類が付いてないことに戸惑うこともあります。特にFタームでは解析して付与する対象が異なりますので、付与基準を確認することが必須です。
次に企業動向調査などで使用する出願人では一般的に注目する企業名や関連する企業名を検索キーにします。ところが企業の社名変更、合併、統合、分割、さらには持ち株会社などへの移行が少なくありませんので、遍歴をしっかり把握して調査にあたることが必要です。また、外国企業の場合には、原則としてはカタカナ表記になりますので、発音の違いで、同じ会社でも表記が異なることがあります。手続きしている特許事務所が複数ある場合にはそれぞれに発音などの表記の揺れがありますので注意が必要です。さらに、創業が間もない時期には、創業社長の個人名で出願がなされているケースもあります。念のため創業者で出願人を特定することも必要になります。ベンチャ―キャピタルからの融資で、研究開発がなされる場合には、発明を担保に融資していることもあり、公開や登録時点では銀行などの金融機関名が出願人になっていることも少なくありません。こうした場合には発明者の住所が本来の企業名内ということで記載されていることもあります。これらを頼りに最終的(融資完済後)に権利者となる可能性の高い企業名を特定することも可能です。
学会発表や学会論文などで、執筆者が特定できる時に、発明者をキーにした調査をする場合もあります。氏名は、表記の相違があります。これもケースによって同じ人物が別の表記になっていることもあります。また中国、韓国などの漢字圏の人は、発音の英語表記をカタカナにしていることが少なくなく、バリエーションがあります。また、結婚、養子、帰化などで、名前が変わることがありますので、出来得る限り、そうした事情を考慮して調査検索することも必要になります。
本内容はJPDSから発行された書籍「企業活動と知的財産~なぜ今、知的財産か~」から一部抜粋して知的財産の基礎的な知識をお伝えしています。
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