検索式作成時の望ましくない演算 第1回
はじめに
2022年12月
日本パテントデータサービス株式会社調査部
嵯峨喜次(知的財産アナリスト(特許))
検索式はいくつかの「概念」を表す集合同士の演算によって調査対象の公報を絞り込むものです。ここでは絞り込みの方法として、問題が生じたり無意味であったりする可能性のある演算方法について紹介します。
尚、ここで紹介する方法は禁止事項ではありません。演算によって発生する問題や課題を理解した上で必要に応じて使うことはあっても良いと考えます。
0.好ましくない演算方法
以下の5つのケースの演算の問題点を説明します。
IPC・FI・CPCにおける特許分類同士の積 〔注:医薬・化学分野では積極利用する場面が有ります。〕
IPC・FI・CPCにおける特許分類同士の積で集合を限定する。
テーマコードが異なるFタームの積
異なるテーマコードを持つFターム同士の積で集合を限定する。
特定内容の異なる特許分類同士の和
異なる技術を示す特許分類同士の和による集合を作る。
特定内容が類似している特許分類とキーワードの積
キーワードの示す意味と特許分類が規定する意味の両者が同じであるにも関わらず、積を取って集合を限定する。
囲い込み検索
調査対象の構成要素に付与される可能性のある分類すべての和をとり、その中をキーワードで限定する調査方法。
1.IPC・FI・CPCにおける特許分類同士の積
発生する問題
2つの概念があると思える公報を特定する時、一方の概念のみの分類を付与される公報が存在するため、IPC・FI・CPCなどの特許分類だけの積では漏れが生じる。
問題となる理由
IPC・FI・CPCは発明のテーマが属する技術に対して付与される。2種類以上のテーマが考えられるとき両方をつける義務はない。
本来のあり方
特許分類とキーワードの積により、特定する。
<FIを掛け合わせた際に検索漏れが生じるイメージ図>
※2つの特許分類の積で特定される公報も存在するので、
漏れていることは承知でそのような公報を調査したい場合は実施しても良い
例)遠隔地との会議のためのスケジュールをするシステムを特定する。
①「遠隔会議」と「スケジュール」に関する特許分類(FI)を調査する。
②「遠隔会議」「スケジュール」のそれぞれのFIの集合の積を取って調査範囲とする。
双方の分類が付与されるものは全件調べて、漏れたものは別の特定方法(例えば特許分類とキーワードの積)にて特定して調査するという方針であれば問題ないが、特許分類の積で全件特定したと考えるのは明らかな間違い。
2.テーマが異なるFターム同士の積
発生する問題
異なるテーマコードの演算では共通な公報がない場合があり、積をとっても殆ど目的の公報は得られない。
問題となる理由
Fタームのテーマコードが付与される範囲のFIは決まっているので、異なるテーマコードでは共通の公報は少ない。
本来のあり方
テーマコードが同じFターム間での積か、どちらかをキーワードとした積で特定する。
<テーマが異なるFタームを掛け合わせた場合のイメージ図>
※テーマコード1・2はそれぞれ別のFIの範囲に付与されており重なりが少ないため、Fターム1・2の積は意味をなさない。
例)LANにおける監視トレースを実施する公報を特定したい
5B042 MA20(デバック/監視 記録,トレースの開始・停止)と
5K030 HC14(広域データ交換・・LAN(バス、ループ、スター型)の積を取った。
例)LANにおける監視制御の用途で伝送効率を向上させるものを特定したい
5K033 BA08(小規模ネットワーク(3)ループ,バス以外・監視制御)と
5K033 AA01 (小規模ネットワーク(3)ループ,バス以外・伝送効率の向上)の積を取った。
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