検索式におけるキーワードの使用 第2回
4.検索範囲は全文か請求項までか
全文で検索した方が漏れは少なくなり、請求項までの方がノイズが少なくなることを考慮して決めるべきですが、以下のように、出現場所により異なるものもあります。
請求項までに含まれる可能性が多い表現
第一、第二、二以上などの表現
詳細に記載される可能性が多く、全文検索した方が良いもの
特定の通信プロトコルやファイル形式、製品が発明の前提となるケース。具体的には、以下のようなものがある。
通信プロトコル:TCP、UDP、RTP、HTTP、SNMP等
圧縮形式:MPEG2(動画)、MPEG3(音声)、JPEG(静止画)
規格:IEEE802.11ax(WiFi規格)等
各種モデル:隠れマルコフモデル、OSI等
製品機能名:AIRDROP、WINDOWS等
5.近傍検索の効果的な使い方
複合語の分解
例)仮想マシン
(仮想+ヴァーチャル+バーチャル)<5W> (マシン+機械+サーバ+コンピュータ+情報処理)
⇒仮想マシン、仮想機械など個々の単語を上げるより効率が良い。
「仮想上のサーバー」など間に予想していない言葉が入っても拾える。
例)参加者
参加 <5W> (者+員+人)
⇒参加者だけでなく参加予定者、参加人員、参加要員なども拾える。
英語における1文字空け表現
例)ネットワーク ※NET WORK (「NET」と「WORK」の間にスペース)
NET <1W> WORK
⇒厳密には近傍表現ではないが、検索システムによってNET-WORK、NETWORKも検索対象とすることができる。
6.類語表現
検索式で使用する類語は、シソーラスではありません。
その検索式で使用する形態で異なります。
同じ言葉でも特定したいものが異なるケース
例)画像
動画を特定したいケースや静止画を特定したいケース、両方を特定したいケースもある。
イメージスキャナに関する技術:画像、静止画、写真、JPEGなど
テレビカメラに関する技術;画像、動画、撮影、映像、MPGなど
画像分析:画像は動画と静止画を含むかもしれない。
言葉の意味では類語ではないが、類語として含めるケース
例)決定
分析して決定する場合、「分析」を類語とすることがある。
選択して決定する場合、「選択」を類語とすることがある。
計算して決定する場合、「計算」を類語とすることがある。
元の言葉に対する操作も挙げるケース
例)画像
カメラによって撮影した画像を特定したいなら、
「撮影」や「カメラ」も類語として扱った方が良いケースもある。
7.類語以外の表現
検索式で概念を特定するキーワードは単語の言い換えとしての類語だけでなく、その意味や定義を特定するのに使用することもあります。
特に新しいキーワードはその考え方が出現した当時は用語が存在しておらず、そのキーワードを使わない公報が初期の重要公報である可能性も高いです。
例)メタバース
仮想現実世界で広告や体験、ビジネスをすることを扱う公報でメタバースという言葉を使用していないケースは多い。
以下のような特定方法が考えられる。
- G06Q(ビジネス)G09F(広告)の配下の特許分類を持つもので、「仮想現実」というキーワードを持つもの
- 「仮想現実」と「広告」のキーワードの組み合わせ
- 「仮想現実」と「販売」「小売」「店舗」などのキーワードの組み合わせ
- 複数の人が参加する3D仮想空間ととらえ、「複数」「人」と「仮想現実」や「仮想空間」との組み合わせ
8.積か近傍かの選択
近傍検索は漏れが多くなるため、侵害回避調査には使うべきでなく、先行技術調査や無効化調査で使うべきという考え方がありますが、漏れは類語のバリエーションがない場合などにも生じ、必ずしも正しい考え方とは言い難い時があります。
積と近傍検索を比べると、ノイズは積のほうが多く、漏れは近傍検索のほうが多いという特性を踏まえた上で調査方針に沿った検索式を作成すれば良いでしょう。
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