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公報速読術 第1回

はじめに

2023年2月

日本パテントデータサービス株式会社調査部

嵯峨喜次(知的財産アナリスト(特許))

 

特許調査の殆どの場面では調査対象の公報をすべて確認します。これは、抽出対象にどれだけ有効な公報があったかも重要な情報だからです。

例えば、調査途中に目的の記載がある公報が見つかったとしても、その後もっと適切な公報が見つかるかもしれませんし、多数あれば広く公知となっていた技術と言えるかもしれません。また、見つからなければ、調査範囲として設定した範囲から今後の調査を継続すべきか、継続するとすればどこを見るかなどを判断するためには重要な情報となります。

 

ここでは、早く目的の公報を見つけるのはもちろんのこと、調査対象となった公報を全て確認する上で、早く、正確に、見落としなく確認する方法を提示します。

 

※弊社の調査サービスにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

1.公報確認方法のポイント

確認用検索式を作成

抽出用に作った検索式をそのまま使うのではなく、確認に都合が良い「抽出用に調査対象を切り出す検索式」を作成する。全体から切り出すことで、JP-NETのような調査ツールではキーワードを色付けし、どの式で検出されるか表示できるので、どの公報にも使用キーワードが色付けされ同じ条件で全公報を確認できる。

可能性が大きい公報から順番に確認する

最初に技術が記載されている可能性の大きい公報をじっくり見ることで、記載内容の傾向を把握でき、後の効率もアップする。また、早く目的技術に近い公報が見つかれば、それを補完する技術を中心に確認したり、何も見つからないなら、調査方針や使用した特許分類、キーワードなどの問題の有無を検討したり軌道修正も早い段階で可能になる。

一度に確認する範囲を制限

1000件以上単位の公報を一度に確認するのでは、集中力が散漫になる。少ない単位を集中して確認することで集中力を維持する。

明らかに対象から外れる公報はまとめて確認する

公報を確認する中で、あるキーワードや特許分類がある公報は、対象外と気付くことがあり得る。もしそれが見つかった場合、先にこれらの公報を確認しノイズを取ることは、確認の能率をあげるのに役立つ。

 

2.確認用検索式の作成方法や具体的な施策について

一度の確認を10~50件程度に分割

集中力を長く持たせることは難しい。集中して一度に読む目標を作り、終わったら一旦休み、また実施することを繰り返す。その単位として、10件から多くとも50件に抑えることが必要。

一度確認したものは、後の確認から排除する

何度も同じ公報を確認することを防ぐような検索式を構成し効率的に確認。

確認の優先度を高める切り出し方法

調査対象が持つ特徴的な構成を表現するもの、目的の内容が記載される可能性が高い公報を切り出す形で検索式を作成する。

対象外と容易に判断できる公報の先行確認

調査の途中、調査対象外である判断が容易にできるキーワードや特許分類が見つかったなら、以降の調査をする前にこれらを先に特定して、調査ができるよう検索式を修正する。

 

2-1. 確認用検索式のイメージ(事例)

下図のように調査対象の全件を、3項で挙げた項目で特定して、全件を10~50件程度に分解した確認単位を作る。このようにすることで、抽出対象の可能性が高いものから順に調査をする。

また、それぞれの集合は、キーワードや特許分類が共通なため類似の技術のものが多く含まれるので、確認の効率を上げることができ、見落としなどを見直す場合も見直す範囲を特定しやすい。

2-2. 優先度の高い公報の特定方法

決まり切ったルールはないが、以下の観点で優先度の高い公報を抽出する。

概念の選択
  • 調査対象を特徴付けるもの(重要な構成要素に対応する概念)
  • 「技術分野」「目的」の概念
  • できるだけ多くの概念の積
概念の表現方法
  • 特許分類とキーワードの積
  • 調査対象が前提となる特徴的な技術の名称
      通信プロトコル、圧縮方式、暗号化方式など
  • 特許分類での表現
キーワードの範囲
  • 全文より請求項までの範囲を優先
  • 複数キーワードでは、積よりも近傍検索を優先
  • 複数ある場合の一部のキーワードのみを使用

抽出用検索式に使っていないパターンでも、必要なら作成

例) 抽出用検索式では全文の検索であったが、確認用では請求項までも使用

2-3. 対象外を判断できるキーワードや特許分類の例

対象外を判断するキーワードの例として次のようなものがあります。無論、このようなキーワードが出現しても、対象外となる可能性は100%ではないかもしれませんが、まとめて確認すれば確認の観点を絞ることが確認できますし、先にノイズを取ることでこのようなノイズがないことを前提に確認できるので能率が上がります。

  1. 静止画像のみしか処理できない装置の分析処理が調査対象の技術であるにも関わらず「動画」「アニメ」「ビデオ」「MPEG」などを入力する分析技術の公報が紛れている。
  2. 共通鍵暗号方式前提の暗号化通信の事例の調査で「公開鍵」「PKI」「認証局」「証明書」(公開鍵暗号方式の用語)の記載のある公報が紛れている。
  3. 自動車でのみ適用できる技術に関する調査で、「鉄道」「船舶」「飛行体」の記載のある公報が紛れている。
  4. 2文字、3文字のアルファベットを抽出のキーワードに使ったところ化学系の出願が多く含まれている(VR(Virtual Reality)、TCP(Transmission Control Protocol)のようなケース)。

①~③は対象のキーワードを請求項までに含む公報を抽出することが可能ですし、④は特許分類のセクションがCで始まるものを含む公報を特定できます。

 

 

※弊社の調査サービスにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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