無効化調査のポイント 第2回
4.課題/目的/効果への着目
無効化以外の調査にも当てはまることではありますが、「課題/目的/効果」で限定することで対象公報の請求項の構成要素に意味が出てくることがあります。
公報請求項の表現
・部屋に家具を配置(VRを使用)
・家具のサイズを計測する機構
目的:不動産の賃借時お客様に部屋を的確にイメージしてもらう。
目的を不動産業のシステムに限定して調査する
「家具のサイズを計測」する必然性が明確になる。
(家具販売システムのノイズを減らし、調査の深堀ができる可能性がある。)
<参考>
・不動産の賃貸・売買システム
賃借・売買対象の部屋にお客様の家具の配置を検証するための仮想現実画像を端末に表示。部屋のサイズは既知だが、お客様の家具のサイズはシステムは知らない
・家具の販売システム
お客様に販売する家具の配置を検証するための仮想現実画像を端末に表示。家具のサイズは既知だが、お客様の部屋のサイズはシステムは知らない
無効化調査では、できるだけ可能性の高い範囲を効率的に調査するので、このようなケースでは「課題/目的/効果」に着目した調査が意味がある可能性があります。
5.実施例に着目
無効資料調査で厄介なのは、その分野の技術者(少なくとも自社の技術者)にとって当たり前と思っていた事項が権利化された時だと思います。当たり前すぎて回避策もなかったりするケースもあったり、対象公報の請求項又はその一部が権利化されている情報を見つけにくいかもしれません。
通常の調査方法で見つからないときは、実施例に対して重点的に着目するのもありかと思います。調査実施者にとっては当たり前のことで改めて示すまでもないかもしれませんが、実施例に着目した調査方法は以下があります。
Fターム(日本の特許公報の調査)に着目
Fタームは全文が対象なので、必要な分類があるかもしれない。
検索範囲の工夫
特許分類は構成要素そのものでなく、より広い技術分野として、キーワードは全文とするなど。
6.調査で見つけたキーワードや分類に注目
無効化調査に固有のことではありませんが、何としても無効資料を見つけることが目的であるので、調査の中で見つけた無効資料として見つけたい技術の一部が記載されていたり、背景技術を記載した公報で使われている用語やキーワードに着目することも有効です。見つけたい技術によく使われる言い換えなども重要な情報となります。
無効資料に近い技術の公報を確認する
・想定外の用語の使用
・想定外の特許分類
見つけた用語や特許分類を検索式に追加する
無効資料の可能性の高い公報が見つかる可能性が高まる
・同じ出願人の他の公報
・調査対象外だった同じ技術分野の公報
言い換えの例) 拡張現実
実画像に仮想の画像やイメージを重ねて表示するような技術なので拡張現実の特許分類や用語が公報になくても「重畳」「表示」という言葉が用いられているケースがある。
特に用語については、同じ出願人は同じ用語を同じ意味で使うことが多いので、
想定外の用語が出てきたときに着目すると無効資料に到達する可能性が高まります。
7.まとめ
はじめの調査実施者が3週間以上かけて調査して見つからなかった無効資料を、この資料で紹介したような観点で半日もかけず見つけられたケースも何度かありました。ただ、これは前に3週間調査した方の調査力が劣っていたのではなく、3週間の系統立った調査があったからこそ見つけるための作戦が立てられ、半日の調査で無効資料が見つかったと思います。
この資料では無効化調査に特化して調査の着眼点を記載しましたが、これらの内容だけにとらわれて調査するのではなく、通常の調査同様、調査観点や調査方針を整理し、どこをどれだけ調査したかを整理しながら調査を進めることが重要と考えています。
私たちが無効化調査のご依頼を受けて調査する際は予め調査範囲について合意いただいてから作業を進めますが、調査途中で有望な特許分類やキーワードを発見すれば自分達の責任で強化調査をすることもあります。調査範囲で不幸にも目的の無効資料が見つからなかったときは、調査範囲を明確にし、ご依頼があった場合には追加調査を行う準備ができるようにしています。ですから、調査結果をベースにお客様自身での追加調査も可能となるかと思いますし、ベースとなる考え方を他の調査にも展開可能かと思います。
追加調査については、殆どのケースで詳細確認しなければならないものの比率は大きく減るので、確認効率は高く一般的には1件当たりかかる時間(費用)も減ります。ただ、追加調査は無効資料の見つかる可能性も低くなるので、ご依頼を受けた場合はそのこともお伝えするようにしています。
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